Production Note

第6回(全6回)
世界照準のクオリティ

映画製作は極秘に進められていたが、11年5月にドバイで開催されたバンダイナムコゲームス主催のプライベートイベント「Level UP Dubai 2011」で正式に発表。それと同時に、世界中で凄まじい反響を巻き起こした。

水島能成プロデューサーは、予想以上の反応に驚きを隠さない。「発表した時に、ほんの数分の予告映像も公開したんですが、本当に世界中のファンが隅々までチェックしてくれて......。『鉄拳』というコンテンツの影響力の大きさに改めて気付かされましたね」。

数えきれないファンが期待している、というプレッシャーは当然、監督の毛利にものしかかる。「いままでの歴史もあるし、これからも続いていく『鉄拳』というコンテンツを扱う以上、失敗できないというプレッシャーはありましたね。でも、今回は本当に信頼できるスタッフが集まってくれた。画コンテ作成では、錚々たるメンバーが担当してくれたし、音響効果のスタッフ、声優さんたちも実力のある方ばかり。製作段階で、これは成功するという自信がさらに持てました」。

さらに毛利は、今作で「3D」という新要素にも果敢に挑んだ。「今回のプロジェクトで大きなカギを握るのが3D。今作にはデジタル・フロンティアの持つ最先端3Dのノウハウがすべて注ぎこまれているので、劇場のお客さんには今まで観たことがない『鉄拳』を体験をしてもらえると思います」。

最強の布陣で完成した『鉄拳 ブラッド・ベンジェンス』は、最初から世界に照準を定めたプロジェクトだと水島プロデューサーは語る。「今作のテーマの一つは日本製映像コンテンツの逆襲です。かつて日本のアニメは"ジャパニメーション"として世界を席巻しました。でもいまや世界的なアニメの市場は3DCGアニメが全盛で、その市場はハリウッドにほぼ独占されている。私たちの『鉄拳』は、日本人にしか作れない3DCGアニメで再び日本の映像コンテンツを全世界に発信し、世界中の人々を驚かせたいと思います」。

『鉄拳 ブラッド・ベンジェンス』は、ゲーム、アニメ、そして映画の歴史を塗り替える、ワールドワイドなビッグ・イベントなのだ。

第5回(全6回)
「鉄拳」らしさとは

そんなプレゼンをした脚本の佐藤大も、実は熱狂的な「鉄拳」ファンでもある。「『鉄拳』といえば、やっぱり三島家の面々です。だからファンが期待するであろう、一八や仁の激しいバトルはキッチリ見せたい。でも、この映画で初めて『鉄拳』に触れる人もいる。しかもそれがアメリカ、ヨーロッパをはじめ、世界中でたくさん待っていることを改めて意識しました。そこで主役はシャオユウとアリサを選択しました。日本が世界に誇るアニメやマンガのコンテンツを象徴する、"制服の女子高生"と"美少女ロボット"に活躍してもらおう!」。

この大胆なアイディアを、やがて原田も理解していった。「『鉄拳』シリーズって、キャラクターにせよ、世界観にせよ、その時々の『面白い!』というアイディアを躊躇することなくカタチにしてきたんです。アリサだって、ロボットだからいきなり首が取れたら面白くない?とか、そういうノリで作っていった。両手がチェーンソーになるっていうのも、サム・ライミ監督の『死霊のはらわた』シリーズの主人公アッシュがヒントになってますし、『ロボコップ』や『ターミネーター』なんかも大好きでしたから、いつかそういうキャラを作りたいと思っていました。そんなふうに、ゲームを作る時には好きな映画とかからいろんな要素を大胆に取り入れてたのに、逆に映画を作るとなると構えちゃって、ガチガチになってたんです。だから映画版も面白ければどんなアイディアも採用する方向に変えていったんです」。

第4回(全6回)
映画にも受け継がれる「鉄拳」のアクション

もちろん映画でも「鉄拳」ならではのアクション描写は重要な位置を占める。監督の毛利陽一は語る。「ゲームの『鉄拳』シリーズでもモーションキャプチャーに長く関わっている、U'DEN FLAME WORKSに今回も協力していただいてます。アクションシーンに関しては、画コンテではなく、実際に技を組み立てて撮影する、動画コンテを作成しています。それをベースに、デジタル・フロンティアが所有する、アジア最大クラスのモーション・キャプチャー・スタジオで、実際にかなり激しいアクションシーンを演じてもらいました。そのデータをさらに調整・演出して作品に活かしています。もちろん、キャラクターを代表する技はふんだんに盛り込んでますよ」。

チーフ・プロデューサーの原田もこの動画コンテの完成度には舌を巻く。「映画のモーションキャプチャーは、僕らが普段やっているものとは違うんですよ。ゲームは技ごとにキャプチャーして、それをつなげていく。でも映画の場合は演技の流れもキャプチャーしなければいけないし、そこにカメラワークも入ってくる。このモーションキャプチャー用の映像を見たときに『いける』と思いましたね」。

第3回(全6回)
"ゲーム"と"映画"の違い

佐藤はゲーム版スタッフが作り上げたプロットを読み込んだが、それらを参考にしつつも、まったく新しいオリジナルストーリーを書き上げた。「最初に読ませていただいたプロットは確かに『鉄拳』でした。ただそれだけではファンにのみ向けられて作られた映画になってしまうと危惧したんです。劇場でさらに大きく、映画ファンも含めて観客を惹きつけるには、もっと芯の通った物語が必要なんじゃないかと考え、新たな物語を提案させてもらいました」。

佐藤は「鉄拳」の世界観を一度解体し、改めて構築し直したオリジナルストーリーを書き上げ、チーフ・プロデューサーの原田勝弘にプレゼンテーションする。そのシナリオを一読した原田は動揺した。「最初に読んだ時は驚きました。シャオユウが主演で、しかも学園モノ。さらに謎の新キャラまで登場する。これはまた僕たちの『鉄拳』が壊されるんじゃないかって心配になって......(笑)。でも、その日、家に帰って独りで考えてみたんです。僕らは『鉄拳』のことは判ってるけど、映画については素人だと。だったら、その道のプロに任せてみたほうがいいんじゃないか」。

この原田の決断が、プロジェクトの方向性を決定づける。「ゲーム版の『鉄拳』では、僕は最終的に責任を負う立場というか、なにかあればストップをかける立場なんですよ。でも、この映画に関してはとことん『GO』で行こうと。言いたいことはたくさんあったけど、ここは任せてみようって決めたんです」。

第2回(全6回)
オリジナルスタッフが結集

映画化という作業において、スタッフたちがイメージしたのは09年に発売されたコンシューマ版「鉄拳6」に収録されている、シナリオ・キャンペーン・モード用のオープニング・ムービーだった。新キャラクターのラース・アレクサンダーソンを主役に据え、激しいアクションと奥深い物語性を両立させた映像を手がけたのは、「鉄拳」シリーズのプロジェクト・ディレクターである原田勝弘をはじめとするゲーム版のスタッフに加え、絵コンテに樋口真嗣、音楽は崎元仁と、各界を代表する強力なクリエイターたち。そしてハイクオリティなCGアニメーションは業界のリーディング・カンパニーであるデジタル・フロンティアが担当。映像としても第一級の仕上がりとなり、各方面から絶賛された。「あの映像の仕上がりをみて、これなら映画になると確信しました。というよりも、私自身がこのスタッフによる長編ムービーを見たくなったんです」と、製作を手がけた水島能成プロデューサーは語る。

こうして「鉄拳」のすべてを知る、ゲーム版の開発スタッフによって映画版のプロットが練り上げられ、脚本を担当する佐藤大に委ねられた。

第1回(全6回)
「鉄拳」映画化構想

世界的な成功を収めている対戦格闘ゲーム「鉄拳」を映画化するという構想は、実は数年前から練られていたプロジェクトだった。ゲームの製作元であるバンダイナムコゲームスは以前より映像製作に対して積極的な姿勢をとっており、特に「鉄拳」の映画化に対してはバンダイナムコゲームスの創業者であり現名誉相談役でもある中村雅哉の思い入れも強かったという。

ゲームのファンが納得し、さらに新たな映画ファンにもアピールする「鉄拳」とはどういうモノなのか。さまざまな角度から企画が検討されたが、その答えはシンプルだった。それは、誰よりも「鉄拳」を愛し、そのすべてを理解している者たちに委ねるしかないという単純な結論。こうして歴代のシリーズを創り上げてきたオリジナルスタッフによる究極の映画化プロジェクトが動き出した。

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